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一般企業法務

第21回企業法務コラム 中小企業が顧問弁護士を持つメリットとは

「先月、取引先から突然『この契約書の条項は認められない』と言われて、どう対応すればいいのかわからなかった」「従業員から残業代の未払いがあると指摘されて、急いで弁護士を探したけれど費用が高くて…」——北海道・札幌で会社を経営していると、こうした場面に突然直面することがあります。法律の専門家でもない経営者が、日々の営業・採用・資金繰りに加えて法務まで担うのは、限界があるのが正直なところでしょう。

特に近年は、中小企業を取り巻く法的環境が急速に変化しています。電子帳簿保存法、インボイス制度、残業規制の強化(働き方改革関連法)など、中小企業に影響する法改正が次々と施行されています。また、2024年11月1日には「フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)」が施行され、フリーランスに業務委託をする事業者に対して新たな義務が課されるようになりました。こうした変化に、経営者が一人でついていくのは、もはや難しい時代になっています。

「顧問弁護士は大企業だけのもので、自社は法的なトラブルとは無縁だ」と考える中小企業の経営者は少なくありません。しかし、現代のビジネス環境は急速に変化しており、中小企業を取り巻く法的リスクは増大しています。実は、顧問弁護士は「何か問題が起きてから頼む」ものではなく、日常的な経営課題を一緒に解決していくパートナーなのです。

今回のコラムでは、中小企業が顧問弁護士を持つことの具体的なメリット、実際にどのような場面で役立つのか、そして費用感まで、北海道・札幌の中小企業経営者の皆さまにわかりやすく解説します。

顧問弁護士とは何か?スポット依頼との違い

顧問弁護士の基本的な役割

顧問弁護士とは、企業や事業者と継続的な契約(顧問契約)を結び、日常的な法律相談や契約書のチェックなどに継続して対応する弁護士のことです。多くの場合、毎月一定額の顧問料を支払い、その範囲内で一定時間の相談や書類の確認などを受けられる仕組みになっています。

中小企業向けの顧問弁護士とは、中小企業が直面する法的な問題やリスクについて日頃から継続的に相談に乗り、取引先との契約書の作成や契約書のリーガルチェック、社内の人事労務の問題や取引先とのトラブルに対応する弁護士です。また、日ごろの企業経営で起こるトラブルやその予兆について解決やトラブル防止の助言をすることで、早期にトラブルの芽を摘み、企業の運営を安定したものとするためのサポートを提供します。

重要なのは、顧問弁護士が「何かあったときだけ呼ぶ専門家」ではないという点です。顧問弁護士は、企業の事業内容や業界動向を理解し、日常的に起こり得る法的問題を洗い出します。契約書の見直しや社内規程の整備、労務管理や取引先との取引条件の確認などを通じて、リスクを最小化する「法のセーフティネット」としての役割を果たします。

スポット依頼(単発相談)との違い

顧問契約の場合、企業の業務内容や経営方針を深く理解した上で、迅速かつ的確なアドバイスが可能となり、予防法務の観点からも大きなメリットがあります。スポット依頼では、事案ごとに説明や情報共有が必要となり、対応のスピードやコスト面で不利になることも少なくありません。

たとえば、ある取引先から突然クレームが来た場合、顧問弁護士がいれば自社の契約内容や取引の経緯をすでに把握しているため、すぐに具体的な対応方針を示してもらえます。一方、スポット依頼では一から状況を説明する必要があり、初動が遅れるリスクがあります。顧問弁護士がいない中小企業では、契約書の不備による取引先とのトラブルや、労働問題・ハラスメント対応の遅れ、法改正への対応漏れなど、さまざまなリスクが現実化しやすくなります。また、トラブル発生時に弁護士を探す手間や、企業の事情を一から説明する必要があるため、迅速な対応が難しくなり、結果的に損害が拡大するケースも多いです。

中小企業が顧問弁護士を持つ5つのメリット

① 予防法務でトラブルを未然に防ぐ

顧問弁護士の最大の価値のひとつが、トラブルが起きる前に予防できるという点です。企業経営においてトラブルを未然に防ぐには、法的リスクの把握と対策が不可欠です。中小企業が直面しがちな契約トラブルや労務問題は、事前の予防策を講じることで多くが回避可能です。特に重要なのは、取引先との契約書の内容を精査し、曖昧な表現や不利な条件を排除することです。また、従業員との関係においては、就業規則の整備や労働条件の明確化が紛争予防に効果的です。

顧問弁護士による予防法務は、コストを大幅に削減することができ、全体的なコストパフォーマンスに優れている点が顧問弁護士の大きなメリットです。トラブルが起きてから解決するよりも、事前に対応しておく方が、時間的にも費用的にも大幅に有利なのです。

② 法改正情報をいち早く受け取れる

法律は常に変化しており、新しい法律の制定や既存の法律の改正が頻繁に行われます。顧問弁護士は、こうした法改正情報を企業に提供し、どのような対応が必要かを助言します。たとえば、労働関連法の改正に伴う就業規則の見直しなども支援します。

たとえば、労働基準法に基づく時間外労働の上限規制について言えば、2018年6月の改正労働基準法により、36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設けられました。この改正により、36協定の届出をしないまま法定労働時間を超えた労働をさせると労働基準法違反となり罰則が科される可能性があります。法改正は、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から施行されています。顧問弁護士がいれば、こうした改正が自社に与える影響を事前に把握し、就業規則の改定や従業員への周知を適切なタイミングで進めることができます。

また、近年注目されているのがフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)への対応です。2024年11月に施行されたフリーランス新法は、個人事業主や一人法人などと業務委託契約を結ぶすべての企業に適用される可能性があります。特に、フリーランスに業務を継続的に委託している・契約書や発注書の整備が曖昧になっている・報酬の支払い時期を明確に定めていない、といった企業は注意が必要です。違反した場合、公正取引委員会等から指導・助言・勧告が行われ、命令違反には50万円以下の罰金が科される可能性があります。

③ 契約書審査で「損する契約」を防ぐ

中小企業の経営者が見落としやすいのが、相手方から提示された契約書のリスクです。取引先が用意した契約書には、自社に不利な条項が含まれていることが少なくありません。具体的には、損害賠償の上限が設定されていない、知的財産権の帰属が相手方になっている、解除条件が一方的に定められているなど、一見わかりにくい条文に落とし穴が潜んでいます。

契約書が多い会社(取引基本契約、業務委託、NDA、利用規約などを「雛形のまま」締結しがちな会社)や、従業員が増えてきた会社(残業代、問題社員対応、解雇・退職勧奨、ハラスメントなど労務リスクが顕在化しやすい会社)ほど、顧問弁護士の費用対効果が出やすいです。

顧問弁護士がいれば、契約締結前にリーガルチェック(法律的な観点からの審査)を受けることが習慣化でき、不利な条件を修正した上で契約を進めることが可能です。また、継続的な契約関係にある取引先との条件変更交渉においても、弁護士のアドバイスのもとで交渉戦略を立てることができます。

④ 労務トラブルへの迅速対応と予防

北海道の中小企業でも、近年は従業員からの残業代請求、ハラスメント問題、問題社員の対応など、労務トラブルが増加する傾向があります。企業には、1日8時間及び週40時間の法定労働時間を超える時間外労働に対する割増賃金の支払い義務が課せられています。また、時間外労働は無制限に許されるものではなく、36協定(労働基準法第36条に規定される時間外・休日労働を行うために労使間で締結する労使協定)を締結したうえで、原則月45時間及び年間360時間の上限を守ることが必要です。

こうした労務管理上の義務を正確に把握し、就業規則の内容を整備し、万が一トラブルが生じた際に証拠をどう保全するかまで、顧問弁護士は一緒に考えてくれる存在です。問題が訴訟に発展してからでは時間的にも費用的にも大きな負担が生じますが、顧問弁護士がいれば初期対応の段階でリスクを最小化することができます。

⑤ 対外的な信用力・交渉力のアップ

顧問弁護士がいることは、契約交渉や取引の場面で「法務体制が整っている会社」という印象につながることがあります。悪質なクレームや不当な要求に対しても、弁護士が対応窓口になることで毅然とした姿勢を示しやすくなります。

また、顧問弁護士は、単に法的なアドバイスを提供する外部の専門家としてだけでなく、貴社の事業成長を共に目指す重要なビジネスパートナーとしての役割も担います。銀行融資の場面や新規取引先との交渉でも、法務体制が整っていることが信頼感につながります。

顧問弁護士が特に役立つ場面とは?実務上のポイント

こんな場面で即相談できる

顧問弁護士がいると、次のような場面で即座に相談・対応が可能になります。

  • 取引先から不当な値引き・代金減額を求められた(下請法違反の可能性を確認・対応)
  • 従業員から「残業代を払え」と請求された(未払い残業代の計算根拠・対応方針の確認)
  • 取引先に納品後、代金を払ってもらえない(内容証明郵便の送付・仮差押えなど債権回収の検討)
  • SNSで自社・従業員について誹謗中傷を書かれた(投稿者の特定・削除請求・損害賠償請求の検討)
  • フリーランスに業務を委託している(フリーランス新法に沿った契約書・発注書の整備)
  • 問題のある従業員への対応(退職勧奨・解雇の適法な進め方のアドバイス)
  • 取引先から一方的な契約変更・解除を迫られた(法的根拠の確認・交渉・訴訟準備)

「相談しやすい関係」があるからこそ早期解決できる

顧問弁護士は事業内容や取引先との関係、社内の事情を継続的に把握しています。そのため、いざトラブルが起きた際にも、一から説明する必要がなく、自社の実情に即した現実的な助言を得やすくなります。

また、多くの経営者は「問題が発生してから」弁護士に相談する傾向がありますが、これでは対応が後手に回り、結果的に高いコストを支払うことになります。顧問弁護士がいれば「ちょっと相談してみよう」という感覚で早期に問題を共有できるため、小さなトラブルの芽を摘み取ることが可能です。日常的な相談関係があるからこそ、早期解決・コスト削減につながるのです。

顧問弁護士の費用相場と導入の目安

月額費用の相場はどのくらいか

「顧問弁護士の費用が高そう」というイメージをお持ちの経営者は多いと思います。しかし実際には、中小企業の顧問弁護士費用は月額3〜5万円が相場(年間36〜60万円)です。業種・規模によって幅がありますが、従業員20人以下の小規模企業でも月額3万円前後から契約できる事務所が増えており、コストに見合う導入効果を感じている経営者も少なくありません。

毎月の顧問料という形であれば、法務にかかる費用をあらかじめ予算化しやすくなります。トラブルのたびに想定外の出費が発生するよりも、経営上の見通しが立てやすい点も利点といえるでしょう。

どんな会社が特に導入効果を感じやすいか

すべての企業に顧問弁護士が必要かというと、一概にそうとも言えません。しかし、次のような状況に当てはまる場合は、顧問弁護士を持つことで大きなリスク軽減効果が期待できます。

  • 取引先が複数あり、毎年契約書を交わしている
  • 従業員が5名以上いる(労務リスクが高まる)
  • フリーランスや外注先に業務を委託している
  • クレームや未払いのトラブルが年に1〜2回以上ある
  • 新規事業やDX推進で新しい契約形態が増えている
  • 事業承継・M&Aを検討している

「困ってから探す」より、「困りそうな領域を先に整える」方が、結果的にコストと時間を抑えられることが多いです。月額数万円の顧問料が、数百万円規模の労働訴訟や取引トラブルを未然に防ぐ投資になると考えると、コストパフォーマンスは非常に高いといえます。

顧問弁護士を選ぶ際の実務上のチェックポイント

自社のニーズに合った弁護士を選ぶ

顧問弁護士を選ぶ際には、費用だけでなく、次のポイントを確認することをお勧めします。

  • 中小企業の企業法務に実績があるか:大企業向けではなく、中小企業の実情に詳しいかどうかが重要です。大企業向けの顧問弁護士は特定の専門分野に注力している弁護士が求められるのに対し、中小企業においては、幅広く企業法務全般に対応可能な弁護士が求められる傾向にあります。
  • レスポンスが速いか:トラブルは急に起きます。相談したときに迅速に回答してもらえるかどうかは非常に重要です。
  • 業種・地域への理解があるか:北海道・札幌の経済環境や地域特有の取引慣行を理解している弁護士であれば、より実態に即したアドバイスが期待できます。
  • 費用体系が明確か:顧問料の範囲内でどこまで対応してもらえるか、追加費用が発生する場合の基準が明確かどうかを確認しましょう。
  • 相性・話しやすさ:日常的に相談する関係だからこそ、話しやすさ・信頼感はとても大切です。

まずは無料相談を活用しよう

顧問弁護士は「訴訟になったときだけ頼む存在」ではなく、契約書・労務・法改正対応といった日常的な法務の相談相手として機能します。費用は月額3〜5万円から始められる事務所が増えており、導入のハードルは以前より下がっています。

顧問契約を検討する際は、まず無料相談を利用して、自社の課題を相談してみることをお勧めします。「うちは小さい会社だから…」と遠慮する必要はありません。むしろ、法務部門を持てない中小企業だからこそ、顧問弁護士が「社外の法務部」としての大きな役割を果たします。

おわりに

今回のコラムでは、中小企業が顧問弁護士を持つメリットについて解説しました。要点を改めて整理すると、次のとおりです。

  • 顧問弁護士は「問題が起きてから」ではなく、日常的に法的リスクを予防する存在
  • 契約書審査・労務管理・法改正対応・クレーム対処など、幅広い場面で役立つ
  • フリーランス新法(2024年11月施行)など新たな規制への対応も、顧問弁護士がいればスムーズ
  • 月額3〜5万円程度から契約でき、大きなトラブルを未然に防ぐコストパフォーマンスは高い
  • 自社の事情を継続的に理解した弁護士がいることで、迅速・的確な対応が可能になる

経営者のみなさまには、「何かあってから相談する」ではなく、「何かある前に備える」という姿勢で顧問弁護士の活用を検討していただければと思います。

当事務所では、北海道・札幌の中小企業向けに、顧問弁護士サービスを提供しています。契約書のチェックや労務問題、取引先とのトラブル対応など、日常的な法律相談から紛争解決まで幅広くサポートいたします。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

簗田真也

弁護士法人やなだ総合法律事務所、代表弁護士。札幌弁護士会所属。スタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、M&A、事業再建・会社清算、国際取引法務を得意とする。弁護士・司法書士・行政書士のトリプルライセンスホルダーでもある。

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