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一般企業法務

第18回企業法務コラム 株主総会の基本的な運営と注意点

「今年も株主総会の時期が来たけれど、正直なところ、何をどう準備すればいいのか毎年不安になる…」そんなお気持ちをお持ちの経営者の方は少なくないのではないでしょうか。特に北海道・札幌の中小企業では、株主が家族や身近な知人だけという会社も多く、「みんなわかっているから形式的でいいんじゃないか」と手続きをおろそかにしてしまいがちです。しかしその「なんとなく」が、後々大きな法的リスクに発展することがあります。

株主総会は、会社法が定める株式会社の最高意思決定機関です。取締役の選任・解任、役員報酬の決定、定款の変更など、会社の根幹に関わる事項はすべて株主総会で決議されます。ところが「議事録を作っていなかった」「招集通知の期限を守っていなかった」「決議の種類を間違えた」といった手続き上のミスが原因で、決議そのものが無効や取消しの対象となるケースが実務上は少なからず発生しています。

株主が少人数の中小企業だからこそ、逆にトラブルが起きやすい一面もあります。株主間での意見対立が生じたとき、過去の総会手続きの不備が一気に問題化することがあるのです。もし顧問弁護士に事前に相談していれば防げたトラブルも多々あります。

今回のコラムでは、中小企業の経営者が最低限おさえておくべき株主総会の基本的な運営ルールと実務上の注意点について、会社法の条文をもとにわかりやすく解説します。

株主総会とは何か|会社の最高意思決定機関の役割

株主総会の基本的な位置づけ

株主総会は、株式会社における最高意思決定機関です。会社法第295条第1項では、会社の組織・運営・管理に関する重要事項を決議する権限が株主総会にあると定められています。ただし、取締役会設置会社の場合、日常的な経営判断は取締役会に委ねられ、株主総会は法律や定款で定められた重要事項について決議を行います。

株主総会には大きく2種類あります。事業年度終了後に毎年開催が義務づけられる定時株主総会と、緊急の経営課題が発生した際に随時開催される臨時株主総会です。株式会社である以上は少なくとも1年に1回は開催されます(会社法295条1項、296条1項参照)。

株主総会で決議できる主な事項

株主総会での代表的な決議事項は以下のとおりです。

  • 取締役・監査役の選任・解任
  • 役員報酬の決定
  • 計算書類(決算書)の承認
  • 定款の変更
  • 会社の合併・分割・解散
  • 剰余金の配当

取締役会設置会社の場合は、①会社法で株主総会の決議事項と定められた事項、②定款で株主総会の決議事項とする旨が定められた事項、のみが株主総会の決議事項となります(会社法295条2項)。これは、取締役会を置く会社では機動的な経営判断が求められるためです。

招集手続きの正しい進め方|期限と通知方法を守ることが大前提

招集通知はいつまでに発送すればよいか

株主総会を開催するためには、まず株主に対して招集通知を送る必要があります。この招集通知の発送期限は、会社の種類によって異なります。

会社法299条1項により、取締役は株主総会の日の2週間前(公開会社でない株式会社にあっては、1週間)前までに、株主に対してその通知を発しなければなりません。中小企業の多くは「非公開会社」(すべての株式に譲渡制限がある会社)に該当しますので、原則として1週間前までの発送が必要です。

ただし注意が必要なのは、非公開会社であっても、株主総会に出席しない株主が書面やオンラインで議決権を行使することができるようにする場合には、公開会社と同じく2週間前までの通知が必要とされています。

また、招集通知の発送は「発送基準」であり、株主のもとに到着している必要はありません。それでも発送期日のカウントミスは実務でよくあるトラブルですので、日程管理には十分な注意が必要です。

招集通知に記載すべき事項

招集通知には、①株主総会の日時と場所、②株主総会の議題、③書面または電子投票ができる場合はその旨、④その他法務省令で定める事項を記載する必要があります(会社法298条1項)。

また、株主総会の招集通知には、招集決定の際に決められた事項を記載する必要があります(会社法299条4項)。取締役会設置会社では、この招集通知は書面で行う必要があります。口頭によって招集通知がされた場合には、株主総会決議の取消事由になる可能性が高いので注意が必要です。

全株主の同意があれば招集手続きを省略できる

中小企業の実務でよく活用されるのが、招集手続きの省略です。株主が1名のみ、あるいは全員が親族である小規模な株式会社では、会社法第300条に基づき、全株主の同意があれば招集手続きを省略することが可能です。

ただし、この株主の同意は必ず事前に得ておく必要があり、口頭の同意でも差し支えないとされていますが、口頭の同意の場合には同意の記録が残らないため、電子メールで同意を得るなど記録を残す形で行うことが望ましいです。

決議の種類と要件|「普通決議」「特別決議」を間違えると大変なことに

3種類の決議方法

株主総会の決議方法は、決議事項の重要性に応じて、普通決議・特別決議・特殊決議の3種類に分けられます。それぞれの要件を正しく理解していないと、後から決議が無効と判断されるリスクがあります。

① 普通決議(会社法309条1項)

法令・定款に別段の定めがある場合を除いて、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成によって成立します(会社法309条1項)。取締役の選任や役員報酬の決定などが該当します。

② 特別決議(会社法309条2項)

特別決議は、株主にとって特に重要な事項で採用される決議方法で、定款で別途定めがない限り、行使可能議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権のうち3分の2以上が賛成することで成立します。定款の変更、役員の解任、会社の合併・解散などが対象となります。

③ 特殊決議(会社法309条3項)

特殊決議は、議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上にあたる多数の賛成を必要とします(会社法309条3項)。非公開会社が全株式を譲渡制限株式とする定款変更などが該当します。

決議要件を誤った場合のリスク

普通決議で足りる事項を誤って特別決議で行っても問題ありませんが、逆は許されません。特別決議が必要な事項を普通決議で行ってしまうと、その決議は法令違反として無効となります。

決議取消しや決議無効の確認がなされると、会社を継続して運営するにあたり大きな影響を及ぼします。特に事業承継や定款変更の場面では、決議の種類を間違えることで登記が通らなくなったり、後から株主に無効を主張されたりするリスクがあります。顧問弁護士に事前確認を依頼することで、こうしたミスを防ぐことができます。

手続きの瑕疵(不備)が招く決議の無効・取消しリスク

決議の取消し・無効・不存在とは

株主総会の手続きに問題があった場合、その決議の効力は「取消し」「無効」「不存在」の3段階で争われます。

  • 決議取消し:招集手続きの不備など比較的軽微な瑕疵が対象。取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に株主・取締役などが訴訟を提起する必要があります(会社法831条1項)。
  • 決議無効:決議の内容そのものが法令・定款に違反する場合。いつでも誰でも無効を主張できます。
  • 決議不存在:議事録上は株主総会開催の記録があっても実際は総会が開催されていない場合や、手続きの瑕疵が著しくもはや株主総会が開催されたとはいえない場合が該当します。大量の招集通知漏れがあった場合などが典型例とされています。

中小企業で特に起きやすいトラブル事例

決議の瑕疵を攻撃する訴訟は、中小企業において経営支配から排除された少数株主により提起されることが多く、その真の意図は和解(多数派への株式の売却による投下資本の回収等)にもっていくことである場合が多いとされています。

具体的に中小企業で多い不備の例としては以下のものがあります。

  • 一部の株主に招集通知が届いていなかった(または送り忘れた)
  • 総会の1週間前(取締役会設置会社においては2週間前)からの計算書類等の備置を怠った場合
  • 取締役会の決議を経ずに代表取締役が株主総会を招集した(決議取消事由となり得る)
  • 特別決議が必要な事項を普通決議で処理してしまった
  • 議事録を作成していなかった

「家族だけの会社だから大丈夫」という認識でいると、後から株主の一人が経営方針をめぐって対立したときに、過去の総会手続きの不備をすべて掘り起こして訴訟を起こされるというケースもあります。

議事録の作成・保管義務|「あとでいいや」は絶対にNGです

議事録の作成は法律上の義務

株主総会議事録の作成は会社法第318条により法的に義務付けられており、作成を怠ると100万円以下の過料が科される可能性があります。一人会社や、株主が一人のみの場合でも株主総会議事録の作成は必須です。

議事録には以下の事項を記載する必要があります(会社法施行規則72条3項)。

  • 株主総会が開催された日時および場所
  • 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  • 出席した取締役・監査役等の氏名
  • 議長の氏名
  • 会社法に定められた一定の内容について述べられた意見または発言の概要

実務上、株主総会から概ね1週間以内に株主総会議事録を完成させる必要があるとされており、総会終了後遅滞なく作成し、備え置かなければなりません。

議事録の保管期間と閲覧請求への対応

株主総会議事録は、本店では株主総会の日から10年間、支店では議事録の写しを5年間、備え置かなければなりません(会社法318条2項・3項)。議事録を備え置かなかったときには、代表取締役に100万円の過料が命じられます(会社法976条8号)。

また、株主および債権者は、会社の営業時間内はいつでも、株主総会議事録の閲覧・謄写の請求をすることができます(会社法318条4項)。ここでいう「株主」に持ち株要件はなく、1株でも有していれば閲覧・謄写請求が可能です。

議事録は税務調査でも確認される重要書類です。取締役の選任や報酬の決定、定款変更などの登記申請を行う際にも添付書類として提出が求められます。「議事録は作ったが内容が不十分だった」というケースも多いため、顧問弁護士にひな形の確認や作成サポートを依頼することが安心です。

おわりに

今回のコラムでは、株主総会の基本的な運営ルールと注意点について解説しました。ポイントを整理します。

  • 招集通知の期限:非公開会社は原則1週間前まで(公開会社は2週間前)に発送が必要(会社法299条1項)
  • 決議の種類:普通決議・特別決議・特殊決議を事項に応じて正しく使い分ける(会社法309条)
  • 手続きの不備:招集通知の漏れや決議種別の誤りは、決議取消し・無効・不存在のリスクにつながる
  • 議事録の作成・保管:毎回必ず作成し、本店で10年間保管する義務がある(会社法318条)

「うちは株主も少ないし、毎年同じようにやっている」という会社ほど、手続きの形骸化が進んでいる場合があります。いざ株主間でトラブルが起きたとき、過去の手続きの不備が一気に表面化し、経営の根幹を揺るがす事態になりかねません。顧問弁護士がいれば、毎年の株主総会の準備段階から、招集通知のチェック、議事録の確認、決議事項の適切な整理まで、継続的にサポートを受けることができます。

当事務所では、北海道・札幌の中小企業向けに、顧問弁護士サービスを提供しています。契約書のチェックや労務問題、取引先とのトラブル対応など、日常的な法律相談から紛争解決まで幅広くサポートいたします。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

簗田真也

弁護士法人やなだ総合法律事務所、代表弁護士。札幌弁護士会所属。スタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、M&A、事業再建・会社清算、国際取引法務を得意とする。弁護士・司法書士・行政書士のトリプルライセンスホルダーでもある。

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