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一般企業法務

第2回企業法務コラム「企業法務の弁護士」と「顧問弁護士」はどう違う?企業が知っておくべき基礎知識

「企業法務を扱う弁護士と顧問弁護士って、何が違うのですか?」 経営者や担当者の方から、こうした質問を受けることは少なくありません。

確かにどちらも“会社の法律問題を扱う弁護士”です。契約書の確認やトラブルへの対応といった場面で活躍する点では似ているため、違いが分かりづらいのも自然なことだと思います。ただ、実際には関わり方や役割に違いがあります。

今回のコラムでは、その違いを整理しつつ、企業にとってどのような関わり方が望ましいのかを解説したいと思います。

「企業法務の弁護士」とは

「企業法務」という言葉は、企業活動に関連する法律問題を広く含む概念です。契約関係、労務管理、知的財産、取引先との紛争、さらにはM&Aやコンプライアンスまで、まさに企業の営み全般を支える法務分野の総称といえます。

この分野を取り扱う弁護士は、企業からの依頼に応じて、必要なときにスポットで関与することが多いのが特徴です。たとえば契約書の作成や交渉に立ち会ったり、労務問題が生じた際に対応したり、あるいは訴訟になった場合に代理人として活動する、といった具合です。中にはM&Aや国際取引のように高度な専門性を必要とする大規模案件に特化して関与するケースもあります。

つまり企業法務を扱う弁護士は、必要な場面ごとに呼ばれる“案件対応型”の存在だと言えます。

「顧問弁護士」とは

これに対して顧問弁護士は、企業と継続的な契約を結び、日常的な相談やサポートを担う存在です。取引条件や契約書を確認する、従業員対応について相談する、クレーム対応の方針を確認するなど、経営の現場で日々発生する細かな法的課題に寄り添います。

顧問弁護士の強みは、企業の事情や業界の慣行を普段から理解しているため、背景を踏まえたアドバイスをスピーディーに行える点にあります。また「この程度のことを相談していいのだろうか」と迷うような些細な疑問にも気軽に応じられるため、トラブルの芽を早めに摘むことができるのです。

法務部を持たない企業にとっては、顧問弁護士が“社外の法務部”のような役割を果たしてくれる、とイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

両者はなぜ混同されやすいのか?

両者の違いが分かりにくい理由は、仕事の内容が部分的に重なっているからです。契約書のチェックやトラブル対応など、表面的には同じような業務に見えることが少なくありません。

しかし本質的に異なるのは、関与の仕方です。企業法務を扱う弁護士は、特定の案件ごとに依頼され、その案件が終われば一旦関与も終わるというスポット型の関係です。これに対して顧問弁護士は、日常的かつ継続的に企業を支え、予防法務を中心に関与していきます。

仕事内容に似た部分があるからこそ混同されがちですが、実際には「関与の深さ」と「継続性」に大きな違いがあるのです。

どちらを選ぶべきか

では、企業にとってどちらの関わり方が望ましいのでしょうか。

突発的なトラブルや専門性の高い案件については、スポットで企業法務に強い弁護士を依頼するのが適しています。訴訟やM&Aなどの案件はその典型です。

一方で、日常的に発生する契約書の確認や労務相談、取引先とのやり取りの中で生じる小さな法的疑問については、顧問弁護士を持つことで大きな安心を得られます。顧問契約があれば、いちいち弁護士を探す手間なく、いつでも気軽に相談できるからです。

顧問契約をしている弁護士がいる場合には、何か起こった場合の対応は、その顧問弁護士に処理の依頼をするのが通常ですが、「日常的な相談は顧問弁護士に任せ、大規模案件ではスポットで専門弁護士に依頼する」というように、顧問契約とスポット契約を組み合わせるハイブリッド型の利用をされる企業もあります。

顧問弁護士がもたらす安心感

経営において「問題が起きてから弁護士に相談する」と、どうしても後手に回ってしまいます。トラブルが大きくなってからでは、解決までに多くの時間とコストが必要になることも少なくありません。

その点、顧問弁護士がいれば、契約締結の前にリスクを洗い出したり、従業員や取引先との摩擦を未然に防いだりと、予防的に対応できます。また、経営判断に法的な視点を加えることで、将来的なリスクを減らすことにもつながります。

特に法務部を持たない中小企業やスタートアップにとっては、顧問弁護士は“社外法務部”として機能し、コストを抑えながら法的リスクに備える手段となり得ます。

おわりに

「企業法務の弁護士」と「顧問弁護士」は、いずれも企業の法律問題を扱うという点では同じです。しかし、スポットで案件ごとに依頼するのか、日常的に継続して支援を受けるのかという関わり方に大きな違いがあります。

両者の違いを理解した上で、自社に合った弁護士の活用を検討することが、安心して経営を進めるための第一歩になるでしょう。特に、日常の“かかりつけ弁護士”として顧問弁護士を持つことは、企業にとって大きな安心感につながります。

「うちの会社に顧問弁護士は必要かな」
「スポットで依頼するのと、どちらが合っているのだろう」

そんな疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

当事務所では、まずは初回無料相談で企業の状況やお悩みを伺い、スポット相談と顧問契約、それぞれの特徴や向き不向きを丁寧にご説明しています。「契約書を一度見てもらいたい」といった小さなご相談も歓迎です。お気軽にご相談ください。

簗田真也

弁護士法人やなだ総合法律事務所、代表弁護士。札幌弁護士会所属。スタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、M&A、事業再建・会社清算、国際取引法務を得意とする。弁護士・司法書士・行政書士のトリプルライセンスホルダーでもある。

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