顧問弁護士とは?一般的な弁護士との違い
「弁護士」と聞くと、裁判になってから頼むもの、というイメージを持っていませんか?
実は、弁護士の本領が発揮されるのは、『トラブルを未然に防ぐ段階』です。
顧問弁護士とは、企業や事業主と継続的な契約を結び、日常的な法務サポートを行う弁護士のこと。単発の『スポット依頼』とは異なり、会社の内情や事業内容を理解したうえで、継続的に関与してくれるのが特徴です。
顧問弁護士がしてくれること
顧問弁護士は、単に「困ったときに相談する」だけの存在ではありません。日々の業務の中にある『小さな不安』や『気になるグレーゾーン』を、法的な視点からクリアにし、安心して事業を進められる環境を整えることができます。
以下のような場面で、その存在価値を強く感じていただけるはずです。
気になることをすぐに相談できる『法務の窓口』
・「この契約書、署名しても大丈夫?」
・「取引先から妙な条件を提示されたが、どう対応すべきか?」
・「従業員とのやりとりでトラブルにならないか不安」
こうした日常的な法務相談に、電話・メール・面談などを通じて即座に対応。「これ、聞いてみよう」と気軽に相談できる存在があることで、経営判断のスピードと安心感が大きく変わります。
契約書のチェック・作成で『後から揉める』を防止
契約書の文言一つで、将来のトラブルを避けられることもあれば、逆にリスクを抱え込んでしまうこともあります。
・「解除条件が不利になっていないか」
・「支払い条件や成果物の定義は明確か」
・「秘密保持義務や競業避止の範囲は妥当か」
顧問弁護士は、契約締結前のチェックや、ビジネスモデルに合った『オーダーメイド契約書』の作成を通じて、安心して取引ができる体制を整えます。
労務トラブルの予防・初期対応
・問題社員への注意や配置転換の進め方
・突然の退職・解雇対応
・労働時間や残業代に関するリスク確認
・ハラスメントの初期対応
こうした場面で、感情ではなく法的な視点に基づいた判断と対応が必要になります。顧問弁護士は、単に『法的に正しい対応』を助言するだけでなく、##企業としての姿勢や風土を損なわない解決##を一緒に考えます。
クレーム・債権回収・トラブル対応
・未払い請求への対応
・理不尽なクレームや業務妨害
・ 取引先との契約解消・損害請求
・ネガティブな投稿や風評リスクの相談
トラブル発生時には、早期対応と冷静な対応が欠かせません。顧問弁護士は、直接交渉・内容証明郵送・警告文の作成などを含め、速やかにリスクをコントロールします。
「弁護士がついている」と伝えることで、相手の態度が一変することも少なくありません。
社内体制ガバナンスの整備・社員教育
・就業規則や社内規程の整備
・個人情報保護や情報セキュリティ体制の構築
・ハラスメント防止研修・コンプライアンス研修の実施
顧問弁護士は、トラブル対応だけでなく、「そもそも問題が起きにくい組織づくり」への関与も可能です。
企業の価値観や文化に沿った社内ルールや教育を構築することで、安心して働ける環境を支援します。
継続的な関係だからこそ「うちの事情をわかってくれる」
顧問契約では、過去の相談履歴や会社の背景が蓄積されていくため、毎回一から説明する必要がありません。
その分、実情に即した具体的なアドバイスや提案が得られるというメリットがあります。
どんな企業に向いている?
顧問弁護士は、法律トラブルが「起きてから」ではなく「起きる前」に活用すべき存在です。
特に、以下のような事業者・状況では、その効果を強く実感していただけるでしょう。
法務部がない・社長がすべてを担っている中小企業
・契約書チェックを自己流でやっている
・従業員対応で法的リスクを意識できていない
・トラブルが起きたときの相談先がない
顧問弁護士は、『外部の法務部』として機能します。経営判断に迷いがある場面でも、法律的な視点から的確に支援します。
急成長中のスタートアップ・ベンチャー企業
・人員拡大と雇用契約の整備が追いついていない
・VC(ベンチャーキャピタル)や事業会社との契約交渉が難航している
・サーやビス提供にあたっての規約・利用条件が不安
法的体制が追いつかないことで、後から大きなリスクになることも。顧問弁護士がいれば、事業フェーズに応じた『攻めと守り』の法務整備が可能です。
IT・建設・不動産など「契約・責任」が複雑な業種
・ IT:著作権、成果物の定義、保守契約のトラブル
・建設:瑕疵、遅延損害、下請法などの法規制
・不動産:重要事項説明、賃貸借契約、保証問題
各業界特有のリスクに詳しい弁護士がいれば、専門性に基づいた具体的な助言が得られ、トラブル予防の精度が上がります。
労働問題が起きやすい業種(医療・介護・飲食・教育など)
・ シフト管理や残業代の扱いが複雑
・ 突発的な退職・配置変更への対応
・ 従業員間のハラスメント問題
これらの業界では、労務リスクが経営に直結するケースが多いため、顧問弁護士が日常的にアドバイスできる環境が極めて有効です。
契約交渉や未払いが発生しやすいフリーランス・個人事業主
・報酬未払い
・契約書がない、あるいは内容が不利
・取引先とのパワーバランスが不均衡
個人事業主やフリーランスでも、顧問弁護士がついているだけで、交渉力や信頼感が大きく変わります。
地域密着型・家族経営の企業
・ 地域の評判に配慮して、強い対応がしにくい
・経営方針の違いで家族間に摩擦がある
・長年の取引先とのトラブルを“揉めずに解決”したい
顧問弁護士は、『表に出さずにスマートに解決する力』も持っています。地元企業ならではの事情も汲みながら、最善の方法を一緒に考えます。
顧問弁護士契約のメリット・デメリット
顧問弁護士契約【メリット】
・日常業務で生じる疑問や不安を即時に解消できる
・トラブルの“芽”を早期に摘み、リスクを最小限に
・自社をよく理解してくれているため、対応が早く的確
顧問弁護士契約 【デメリット】
・毎月の固定費が発生する(ただし予算に応じた契約プランも可能)
・利用頻度が少ないと「もったいない」と感じることも
とはいえ、一度のトラブルで数十万〜数百万円の損害が発生することを考えると、『転ばぬ先の杖』としての費用対効果は極めて高いと言えます。
顧問弁護士の選び方
・自社の業界や規模に理解があるか
・スピーディーかつ丁寧な対応が可能か
・契約内容(料金・対応範囲)が明確か
・話しやすく、信頼できる人物か
まずは短期的な「お試し契約」からスタートできる事務所もあります。実際に相談してみることで、相性や対応力を確認するのが最も確実です。
おわりに
顧問弁護士は、「問題が起きたときに助けてくれる人」ではなく、『問題が起きないようにしてくれる、日常のパートナー』です。
法律リスクを“経営の邪魔なもの”として捉えるのではなく、『安心してチャレンジするための土台』として捉えてみてください。
「いつでも相談できる弁護士がいる」という安心感が、あなたの事業にとって、どれほど心強いものになるか、それをぜひ、実感していただければと思います。