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一般企業法務

第8回企業法務コラム 問題社員を簡単に解雇できない理由と、会社が取るべき現実的な対応

「辞めさせたいのに、辞めさせられない」という現実

中小企業の経営者や管理職の方から、
「何度注意しても改善しない社員がいる」
「周囲の士気を下げているのに、どうにもならない」
といったご相談を受けることは少なくありません。

感情的には「もう辞めてもらいたい」と思うのが自然でしょう。しかし、日本の法律では、会社が社員を解雇することは想像以上にハードルが高く、対応を誤ると、解雇した側である会社が不利な立場に置かれてしまうことがあります。

今回のコラムでは、なぜ問題社員を簡単に解雇できないのか、その理由と、会社が現実的に取るべき対応について解説します。

なぜ問題社員は簡単に解雇できないのか

日本の労働法制では、解雇は「最終手段」と位置づけられています。法律上、解雇が有効と認められるためには、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」であることが必要とされています。

このため、会社側が「困っている」「迷惑している」と感じていても、それだけでは足りません。業務能力が低い、態度が悪い、ミスが多いといった事情があっても、それがどの程度なのか、改善の機会は与えられたのかといった点が厳しく見られます。

特に多いのが、「明らかに問題だと思っていたが、記録もなく、正式な指導もしていなかった」というケースです。この場合、後から解雇の正当性を主張することは非常に難しくなります。

会社がやりがちな危険な対応

問題社員への対応で、会社がついやってしまいがちな行動があります。

例えば、我慢の限界に達し、ある日突然「もう来なくていい」と解雇を告げてしまうケースです。これは最もリスクの高い対応と言えます。

また、口頭での注意を何度も繰り返しているものの、書面による指導は一切行っていない、あるいは注意の内容が曖昧で、何を改善すべきか本人に伝わっていないケースも少なくありません。

他の社員からの不満等を理由に解雇を検討することもありますが、「周囲が嫌がっている」という事情だけでは、法的には十分な理由にならないのが実情です。

「問題社員」と評価される行為とは何か

一口に問題社員と言っても、その内容はさまざまです。

遅刻や欠勤を繰り返す、業務命令に従わないといった勤務態度の問題もあれば、業務能力が著しく不足しているケース、さらにはハラスメントなど、他の社員とのトラブルを引き起こす行為もあります。

重要なのは、それぞれのケースで取るべき対応が異なるという点です。

能力不足であれば教育や配置転換が検討されるべきですし、規律違反であれば注意・指導や懲戒処分が段階的に行われる必要があります。

どのタイプであっても共通して言えるのは、「問題がある」という評価を、客観的な事実として積み重ねていくことが欠かせないということです。

会社が取るべき現実的な対応ステップ

問題社員への対応で最も重要なのは、「いきなり結論を出さない」ことです。

まず、具体的な事実を整理し、いつ、どのような行為があったのかを記録として残します。そのうえで、本人に対して、何が問題で、どのような改善を求めているのかを明確に伝えます。

この際、口頭だけでなく、書面等による記録が残る形での注意や指導を行うことが重要です。改善の期限や目標を示し、改善の機会をきちんと与えたかどうかが、後々の判断で大きな意味を持ちます。

それでも改善が見られない場合には、配置転換や業務内容の変更といった選択肢を検討し、それでもなお問題が解消されない場合に、懲戒処分や解雇を検討する、という段階的な対応が求められます。

就業規則が果たす重要な役割

問題社員対応において、就業規則は非常に重要な役割を果たします。

就業規則がない、あるいは内容が曖昧な会社では、どのような行為が問題で、どのような処分があり得るのかを示すことができません。

また、就業規則があっても、実際の運用と合っていなかったり、長年見直されていなかったりすると、いざというときに「使えない」規則になってしまいます。

懲戒処分や解雇を検討する場合には、就業規則にその根拠が定められているかどうかが、非常に重要な判断材料になります。

問題社員対応で専門家に相談すべきタイミング

多くの会社では、「もう限界だ」と感じてから弁護士に相談されます。しかし、その時点では、取れる選択肢が限られてしまっていることも少なくありません。

実際には、最初に違和感を覚えた段階で相談することで、記録の取り方や指導の進め方を整理でき、結果としてトラブルを防げるケースも多くあります

顧問弁護士がいれば、日常的な対応について助言を受けながら進めることができ、経営者の心理的負担も大きく軽減されます。

感情ではなく「手順」で対応することが会社を守る

問題社員への対応は、感情的になりやすいテーマです。しかし、感情で動いてしまうと、結果的に会社が大きなリスクを背負うことになりかねません。

重要なのは、問題を放置せず、正しい手順を踏んで対応することです。それは問題社員本人だけでなく、真面目に働いている他の社員、そして会社そのものを守るための対応でもあります。

適切な対応を積み重ねることで、会社はより健全な組織へと近づいていくはずです。

当事務所では、これまで多くの中小企業の労務・人事トラブルに関与し、状況に応じた現実的な解決を支援してきました。「この対応で大丈夫か」「今の段階で何をしておくべきか」といったご相談だけでも構いません。日常的に相談できる顧問契約から、スポットでの無料相談まで、会社の実情に合わせたサポートをご用意しています。まずはお気軽にご相談ください。

簗田真也

弁護士法人やなだ総合法律事務所、代表弁護士。札幌弁護士会所属。スタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、M&A、事業再建・会社清算、国際取引法務を得意とする。弁護士・司法書士・行政書士のトリプルライセンスホルダーでもある。

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