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一般企業法務

第5回企業法務コラム ランサムウェア被害から企業を守る – 法務リスクマネジメント

最近ニュースでもよく見かける「ランサムウェア」。これは企業や組織のコンピュータに侵入し、データを暗号化して使用不能にするサイバー攻撃の一種で、復旧のために身代金を要求されることがあります。最近では、大企業だけでなく中小企業でも被害が報告され、他人事ではないリスクとなっています。

ランサムウェアに限らず、企業は常にサイバーセキュリティのリスクにさらされています。マルウェアやウイルス感染による情報漏洩だけでなく内部による不正など、事故はいつ起こるか分かりません。重要なのは、「絶対に安全」と考えるのではなく、問題が発生することを前提に備えることです。これはまさに、企業法務における「予防法務」の考え方と重なります。

契約・責任の整理:発生前提での備え

サイバー攻撃による被害は、自社だけでなく取引先や顧客にも影響を与える可能性があります。契約上の責任範囲を明確にしておくことは、事故発生時の損害を最小化するために不可欠です。

たとえば、委託先やクラウドサービスの契約で求めるセキュリティ対応や、免責範囲の整理などは、事前に検討しておくことでリスクをコントロールできます。

法令・規制対応:万が一に備えた初動体制

個人情報や重要データが流出した場合、報告義務や通知義務など法律上の対応が求められます。事故が発覚してから慌てて対応するのではなく、事前に社内の報告ルートや対応手順を整理しておくことが重要です。

初動対応を想定して準備しておくことで、法令違反や余計な損害の拡大を防ぐことができます。

初動対応と社内体制の整備

セキュリティ事故は、起こることを前提に備えることが肝心です。発生直後に行うべき基本的な行動は、システム遮断、関係者通知、外部専門家との連携などです。また、社内で誰がどの権限で判断・対応するかをあらかじめ決めておくことで、混乱を防ぎ、被害拡大を抑えられます。

こうした体制は、社内マニュアルとして整理しておくことが望ましいでしょう。

損害賠償・法的リスク

万が一、顧客情報が漏洩した場合には、損害賠償責任が発生する可能性があります。身代金の支払いも、犯罪収益処罰の観点でリスクがあります。

発生前にリスクを整理し、初動対応の手順を社内で統一しておくことが、被害を最小化する上で重要です。

おわりに – 発生前提で備えることの重要性

ランサムウェアやその他サイバー事故による100%完全に防ぐことはできません。大切なのは、事故が起こることを前提に、事前に契約上の整理、社内体制、対応フローを構築しておくことです。また、事故が起こった後の対応、特に初動の対応が重要となります。予防法務の考え方と同じく、トラブルが起きてから慌てるのではなく、あらかじめ備えることが企業を守ります。事前の準備、体制構築が実際の事故が起きた際の初動にも大きく影響します。

サイバーリスクに対する備えは、日々の業務の中で優先順位をつけにくい課題でもあります。顧問弁護士がいることで、契約書の整備や初動体制の確認、トラブル発生時の対応アドバイスなど、必要な法務支援をすぐに受けられます。

当事務所の顧問サービスでは、企業の規模や業種に合わせた法務リスクの整理から、万が一の事故発生時の実務対応まで、総合的にサポートしています。「自社のリスクを事前に確認したい」「発生前提での備えを整えたい」とお考えの場合は、まずお気軽にご相談ください。

簗田真也

弁護士法人やなだ総合法律事務所、代表弁護士。札幌弁護士会所属。スタートアップ・ベンチャー法務、不動産法務、M&A、事業再建・会社清算、国際取引法務を得意とする。弁護士・司法書士・行政書士のトリプルライセンスホルダーでもある。

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